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Thursday, April 16, 2020

銀行株下落に映る景気不安、後退する政策期待 - 日本経済新聞

政策期待などを背景に好転しつつあった市場心理に再び冷や水が浴びせられた。個人消費の停滞など米経済統計を中心に、新型コロナウイルスによる影響が改めて意識された。この日は景気に敏感な業種が全体的に売られ、日経平均株価の下げ幅は一時400円に迫った。なかでも市場が注目するのは銀行株の軟調な動き。今後の不良債権の増加など実体経済の悪化を映し出している可能性がある。

「政策効果による相場上昇は終わり、今後は実体経済と企業業績の悪材料を見極めにいく段階だ」。藍沢証券の三井郁男・投資顧問部ファンドマネージャーはこう話す。

実体経済がどこまで打撃を受けるのか。その広がりと深さを探る材料が銀行株。工場や店舗の休止による売り上げ減少に見舞われるなか、事業会社は手元資金の確保を重視して銀行からの借り入れを増やしつつある。事業会社の信用リスクが高まると最終的には不良債権などの形となって銀行経営にのしかかりかねないからだ。

この日は業種別東証株価指数(TOPIX)の「銀行」は2%安となり、TOPIX全体の下落率(1%安)よりも下げがきつかった。三菱UFJフィナンシャル・グループなどメガバンク株はそろって下落。3月末との比較で日経平均が2%上昇したのに対して、業種別日経平均の銀行は2%安に沈む。香港株式市場では英金融HSBCやスタンダードチャータード銀行に売り圧力が高まった。

不安をかき立てたのは15日に発表された米金融大手行の決算だった。バンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックスなどの2020年1~3月期決算は、そろって2桁減益。新型コロナによる景気悪化を踏まえて貸倒引当金を積み増したことが収益を圧迫した。

ニューヨーク原油先物は前日に一時18年ぶりの安値圏に沈んだ。米国の基幹産業である石油関連企業の業績が悪化すると、債務返済に響きかねないとの懸念は根強い。大手銀行が取り組む資源関連のプロジェクトファイナンスに影響が出れば、引当金をさらに計上する事態もあり得るとの見方も聞かれる。

感染拡大が止まらない日本国内でも景気減速が顕在化しつつある。外出自粛で生活必需品を除いた消費は急減。訪日外国人の需要消滅も重なり、サービス業を中心に危機感は強まるばかりだ。マネックス証券の大槻奈那チーフ・アナリストは「雇用や所得を取り巻く環境が悪化すれば、住宅ローンなど個人に関わる与信費用も増えかねない」と警鐘を鳴らす。

メガバンク3行のPBR(株価純資産倍率)は低下傾向にあり、いまや0.3倍程度と解散価値を示す1倍を大きく下回る。投資指標では割安でも「買う理由が見つかりにくい」(国内証券)。日米ともに銀行業界の稼ぐ力を左右する運用環境は依然厳しいままで、信用リスクや資金需要にどこまで耐えられるのか、不安視する向きもある。

この日の取引終了後には、政府がこれまで7都府県だった緊急事態宣言の対象地域を全国に広げる方向で調整に入ったと伝わった。経済への影響が一段と広がるのは不可避といえる。

「楽観論と焦燥感による買いは一巡した」とマッコーリーキャピタル証券の増沢丈彦氏は指摘する。政府の景気下支え策などをきっかけにこのところグローバルマクロ系ファンドが日本株買いを積極化。ベンチマークとする株価指数が上昇する様を見て、焦燥感にかられた国内機関投資家が追随したとの構図だった。

だが銀行株下落からは、実体経済悪化という、好ましからざる次のシナリオに市場が備え始めたのがうかがえる。相場全体が二番底に向かうのか、投資家はいま一度足元を見つめる局面に入ったといえそうだ。

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