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Tuesday, July 7, 2020

マイボトルの給水スポットをCHECK! 地域のつながりも強化する、楽しいエコアクション。【今週のサステナTips】 - VOGUE JAPAN

プラスチックごみに汚染された沖縄の海岸。Photo: mymizu

残念ながら、日本はよく知られる通り「プラスチックごみ大国」だ。事実、日本はプラごみ排出量においてアメリカに次いで世界2位という、深刻な状況にある。さらに、街中に設置された自動販売機からいとも簡単に飲み物を買うことができるため、日本のペットボトル飲料の販売本数は年間252億本にも上ると言われている。一人当たりに換算すると、なんと年間約200本も消費していることになるのだ。

一方で、日本のペットボトルのリサイクル率は84.5%と世界と比べても高い水準を誇る。引き続き私たちは、分別に取り組むことがマストだ。しかし同時に、リサイクルされぬまま焼却されたり、最悪の場合、そのまま回収されずに一部海や川へと流出し、海洋汚染に加担しているという側面を見過ごすわけにもいかない。また、日本は使用済みペットボトルの4割を海外へ輸出し、現地での処理に頼っている。もちろん、プラごみを再資源化することで環境負荷は大幅に減少できるが、それによる年間の二酸化炭素排出量は210万トンに上る。リサイクル技術の向上に感謝しつつ、なるべくプラスチック製品を使わないよう心がけることが大切だ。

Photo: mymizu

そこで登場するのが、マイボトル。最近のマイボトルは、スタイリッシュなデザインのものから浄水機能がついているもの、あるいは携帯に便利なミニサイズなど、昔に比べると格段に選択肢が増えている。私たち消費者の環境意識の高まりが、マイボトルへのニーズ拡大の背景にあるのは間違いない。加えて、自宅からハーブティーやフルーツウォーターなどお気に入りのドリンクを持ち歩くことができるため、健康にもお財布にも優しいという意味でマイボトルのメリットを実感している人は多いはずだ。

さて、こうしたマイボトルブームの流れの中で、近年、「給水スポット」をマッピングして、より便利に楽しく環境活動に参加できるプラットフォームが支持を拡大しつつある。今回は、その中でも2つの取り組みを紹介しよう。

地域の人たちが主役のリフィル活動。

イベント会場に設置した仮設給水機。Photo: 水Do!ネットワーク

「一本のペットボトル消費を減らすだけで、二酸化炭素排出量を1 / 1000に削減できるって知っていましたか?」

そう問いかけるのは、水Do!ネットワーク事務局長の瀬口亮子だ。水を飲むという行為自体をより環境負荷の少ないものに変えようと、2014年から自治体などに呼びかけ、給水スポットを増やしていく活動を始めた。活動の鍵となったのが、500mLペットボトルを1本購入した場合と、冷水機からマイボトルに給水したときのライフサイクルアセスメント。その差は歴然で、ペットボトルに入った国産ミネラルウォーターを購入したときの温室効果ガスは228g、さらに輸送コストがかかる輸入ウォーターの場合339gであるのに対し、水道水をマイボトルに汲むと排出されるのはわずか8gだという。

水道水を無料で給水してくれる東京のカフェ。Photo: 水Do!ネットワーク

昨年5月には、イギリスを拠点に同様の活動を行っていたRefillとタッグを組み、新プロジェクトRefill Japanを始動した。同プロジェクトの一番の特徴は、地域の人が主体となり、市民団体などと連携してリフィル活動を推進している点だと瀬口は話す。

「日頃から地域で生活する地元の人たちでなけでば、効果的かつ持続的な活動になりません。これは地域の人たちを主役に据えた、街づくりの一環なのです」

Refill Japanが発行している「給水マップ」には、メンバーやボランティアによって実際に確認された給水スポットが掲載されている。現在、日本全国で600を超えるスポットが登録されているが、公共の給水機はもちろんのこと、飲食店やリユースショップなどの協力を得て、今もその輪は広がり続けている。

祇園祭に設置された仮設給水機。Photo: 水Do!ネットワーク

また、イベント会場や夏場の観光地などにも熱中症対策を兼ねて仮設の給水機を設置し、ニーズを実証することで、多くの自治体が常設インフラを設備する橋渡しも行っている。例えば、昨年7月は京都の祇園祭でオリジナルデザインの仮設給水機を設置し、多くの人が利用しただけでなく、水道水のイメージアップにもつながった。京都市は今後もさまざまなイベントなどで導入していくという。

「私たちは、ただ給水スポットをマッピングしていくのではなく、地域の活動を通じて人々のつながりを広げていきたい。個人の価値観やアクションを変えていくことも重要ですが、自治体やシステムを変えることで、より持続可能な社会が実現できると考えています」

Refill Japanでは、地域のリフィル活動に参加するメンバーを随時募集している。クオリティーの高い日本の水道水を活用し、潤いのある街づくりに貢献しよう。

マイボトルから始まるソーシャルイノベーション。

共同創設者のマクティア・マリコとルイス・ロビン敬。Photo: mymizu

2019年9月に日本初の給水アプリをローンチしてから、わずか9カ月で急成長しているプロジェクトがmymizuだ。国際的なネットワークを用いて社会問題の解決を推進する、一般社団法人Social Innovation Japanから始まった本プロジェクトは、無料で給水できる場所を簡単に探せるアプリを始め、ワークショップやコンサルティングサービス、教育機関や自治体、企業などとのコラボレーションを通し、より多くの人にサステナビリティや環境保護について考えてもらうプラットフォームだ。mymizuの共同創設者のマクティア・マリコは、活動のきっかけについて、こう語る。

「2017年に沖縄へ行った時に、美しいビーチが広がっていた一方で、たくさんのプラスチックごみで汚染されている海岸があることを知りました。この状況に衝撃を受け、プラスチック問題の深刻さを改めて実感したのです。ただ、環境問題を解決するには、社会システム全体を変える必要があるため、時間がかかります。だから、問題が大きすぎて無力に感じてしまう人も多い。でも一人ひとりの行動が大きなインパクトにつながるということを実感し、楽しく環境問題に取り組めるプラットフォームができないかと思ってスタートしたのが、マイボトルを持つことから始められるmymizuでした」

無料給水スポット。Photo: mymizu

この9カ月間で、mymizuアプリは世界40カ国でダウンロードされ、国内では約6000箇所、海外も含めると約20万箇所の給水スポットを確認できる。また世界では、mymizuでボランティアをしたいという声があとを絶たず、彼らの手によって、公共の給水スポットだけでなく、mymizuスポットとしてカフェやショップなどが数多く登録されている。「mymizuスポットになるために、蛇口をつけました」という企業もあったとか。また、行きつけの店舗にmymizuを紹介したいという人や、自ら積極的にmymizuスポットになりたいという店舗は、QRコードを読み込むだけで簡単にパートナーになれるので、ぜひ活用してみよう。

そしてアプリのもう一つの特徴が、トラッキング機能だ。mymizuを利用することで削減できたペットボトルの数や、二酸化炭素の排出量、節約金額、飲んだ水の量を確認することができモチベーションが上がるだけでなく、環境問題に取り組む人々と一緒にプロジェクトに参加していることが実感できる。ユーザーから寄せられた声に、マクティアは手応えを感じたという。

「ニッチな取り組みですし、ローンチするまではとても不安でした。でも『こんなアプリを待っていました!』『給水スポットへ行ってみたら、すてきなカフェと出会えました』『ゲームみたいで楽しい!』といった声がたくさん寄せられました。

mymizu生活を100日続ければ、ペットボトルの消費量を減らせることはわかります。でも、それが二酸化炭素排出量にどう影響し、どれだけコミュニティが団結して環境負荷を抑えられるかを数字で知ることは大切です。なにより、好きなことじゃないと続かないので、楽しんで取り組んでいけるよう、今後もアプリはアップデートしていきたいですね」

個人やコミュニティがどれだけ環境負荷を低減できたかを可視化。Photo: mymizu

マクティアがいうように、コミュニティ作りはmymizuにとって非常に重要な要素だ。mymizuでパートナーシップマネージャーを務める鈴木玲子は、こう語る。

「毎週インスタグラムで、ゲストスピーカーを招いてトークセッションを開催しているのですが、参加者から必ず聞こえてくるのが、『周りに環境問題について一緒に取り組める人がいない』といった悩みです。そういう人に伝えたいのが、ひとりじゃないということ。マイボトルを持つこと、アプリを活用すること、イベントに参加すること、私たちのブログを読んでもらうこと等、ささいな活動でいいんです。自分が楽しめる方法でコミュニティに参加してもらい、一緒に取り組んでいけたら嬉しいですね」

マイボトルの次にあるもの。

2020年4月にオンラインショップをローンチ。商品を購入すると、「オーシャン・ループ」イニシアチブに参加することができ、mymizuでは1商品あたり1kgの海洋プラスチックごみの回収をビーチクリーンなどを通し行っている。Photo: mymizu

先にも述べたように、mymizuのミッションは、社会全体の消費構造自体を環境によい方向に変化させていくこと。すでに80以上のセミナーや講演会を実施し、今では100社を超える企業から問い合わせが相次いでいる。例えば、自然電力とパートナーを結んだmymizuでんきは、マイボトル推進の次にあるものとして、100%自然エネルギーへ切り替えをユーザーやmymizuスポットの店舗に促している。鈴木はこの活動の狙いについて、こう話す。

「ペットボトルの削減の次に、何をすればいいかわからなければ、そこで終わってしまう可能性があります。mymizuユーザーは個人の行動でインパクトを起こしたいと考えているので、生活の中でそれが可能なツールやサービスをどんどん紹介していきたい。選択肢があるのなら、より環境に優しいほうにお金を投じてほしいのです。こうした消費者の意思表示が、企業や政府の考え方を変えていくと信じています」

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Text: Mina Oba

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