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Wednesday, November 4, 2020

「eSIM」サービス強化に見る楽天モバイルの新戦略と課題 - Techable

楽天モバイルが、「eSIM」のサービスを強化する。これまでも、同社は他社に先駆け、eSIMを導入していたが、新たに本人確認の仕組みとしてNECのシステムを使った「eKYC」に対応する。

eKYCとは、画像や動画などを使って、免許証などの本人確認書類と本人を照合する仕組みのこと。楽天モバイルによると、照合はAIで行い、人による目視の確認を裏側でバックアップとして走らせることで、ほぼ即時に近い形で回線を開通できるようになるという。

楽天モバイルeSIM推進の狙い

同社は、eSIMをいち早く取り入れてきた1社。自社ブランドを冠した「Rakuten mini」や「Rakuten BIG」などの端末にはeSIMを搭載しており、オンラインでSIMカードの情報を書き込むことができる。ただ、これまでは本人確認の問題があり、新規契約やMNPでの転入時には郵送で送られてくる端末や書類を待たなければならなかった。申し込みから利用開始までのリードタイムが短いのが売りのひとつだったeSIMの魅力が、半減していたというわけだ。

eKYCを導入することで、この課題が解決される。導入は11月9日から。「my 楽天モバイル」アプリを利用する関係で、まずはAndroid向けにサービスがスタートするが、iOS版も11月30日に開始される予定だ。開始時点では、運転免許証を写真で撮影するなど、少々ユーザー側の手間がかかるが、今後はアプリ側にICカード読み取り機能を持たせて、マイナンバーカードに対応していく。対応スマホは限られるが、より簡単に手続きができるようになりそうだ。

「my 楽天モバイル」アプリがeKYCに対応する。カメラで免許証と本人の写真を撮って、AIで照合を行う

eSIMを推進する一環として、対応端末もさらに拡充する。自社ブランド端末として、片手持ちがしやすくスリムな「Rakuten Hand」を12月上旬に発売。さらに、メーカーブランドの端末もeSIMに対応する。シャープの「AQUOS sense4 lite」と、OPPOの「OPPO A73」がそれで、どちらも物理SIMとeSIMのデュアルSIMに対応したモデルだ。「今ご使用中の回線を(物理SIMで)そのままに、eSIMで楽天モバイルをお試しいただける」(楽天モバイル常務執行役員兼CMO 河野奈保氏)。

eSIM対応端末も拡充。シャープのAQUOS sense4 liteとOPPOのOPPO A73を導入する

同時に、楽天モバイルは、新規契約の事務手数料を無料化。総務省に求められていたMNP転出手数料も無料化し、「入るのも0円、出るのも0円」(代表取締役会長兼CEO 三木谷浩史氏)を実現する。eSIMとeKYCや新規契約手数料0円で入り口の敷居を下げ、ユーザーを獲得していくのが楽天モバイルの狙いだ。

新規契約やMNP転出時の手数料も無料化

ユーザー獲得における課題

一方で、eSIMにはまだ課題もある。対応端末が少ないことが、そのひとつだ。先に挙げたように、お試し感覚で2回線目として楽天モバイルを使いたいと思っても、eSIM対応端末がなければそれができない。いくら楽天モバイルが端末を用意しても、ユーザーが新たにそれを購入するとなると、ハードルは上がってしまう。

楽天モバイルの思惑どおり、eSIMはユーザーがキャリアを変えやすくなるため、大手3キャリアは対応に消極的。総務省の公表したアクションプランでは、eSIMを推進することがうたわれているものの、自社型番をつけて販売するAndroid端末が、どこまでeSIMやデュアルSIMに対応するのかは未知数だ。

現状では、iPhone Xs以降のiPhoneや、Pixel 4以降のPixelがeSIMに対応しており、他キャリアも販売している。特にiPhoneは日本でシェアが高いため、楽天モバイルにとってのターゲットにはしやすい。ただ、現時点では楽天モバイル自身がiPhoneを取り扱っておらず、動作保証も完全にはできていない。新たに発売されたiPhone 12シリーズでも、鳴り物入りでスタートさせた5Gが利用できないといった制約がある。

iPhoneやPixelがeSIMに対応しているが、動作保証の面などで課題がある

また、eSIMはユーザー自身がQRコードを読み取って設定することになるため、比較的高いリテラシーが求められる。eSIMに書き込むプロファイルをダウンロードするには、Wi-Fiや1回線目のモバイルデータ通信などが別途必要になるのも、少々わかりづらいポイントだ。自宅や会社でWi-Fiに接続できるユーザーはいいが、モバイル回線だけですべてをまかなっている人には、初期設定がハードルになる。リテラシー向上は一朝一夕にはいかないため、ユーザーとどうコミュニケーションをどう取っていくのかは今後の課題と言えそうだ。

(文・石野純也)

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