王毅・中国外相が来日し記者会見(11月24日)した際、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐり、「正体不明の漁船が敏感な海域に侵入している」と述べた発言が波紋を広げている。 【全画像をみる】尖閣付近の「正体不明の漁船」とは何か。メディアが中国外相発言を追求しない理由 日本の主要メディアは「正体不明船」が何を指すのか一切報じていない。日本の「右翼の挑発」を問題視する中国側の論理を紹介すれば、中国公船の領海入りを追認した(正当性を認めた)と受け取られかねないためとみられる。
日本の「挑発」が追尾の理由
問題となった王毅氏の発言は、11月24日に行われた日中外相会談後の共同記者発表の場で飛び出した。 王氏は、「正体不明の漁船」がひんぱんに釣魚島の敏感な海域に進入しているため、中国公船がやむを得ず「必要な反応をしている」と「追尾」の理由を説明した。日本では2020年5月以来、中国公船が尖閣領海に侵入し、「日本漁船を追尾している」との報道が目立つ。 追尾について在京中国関係筋は、筆者を含む全国メディアの記者に対し、「実際は漁船ではなく右翼勢力のデモンストレーション船」とし、「活動家が島に上陸しないよう監視するのが追尾の理由」と、日本側の「挑発」が原因との立場を非公式に説明してきた。王毅発言はこの非公式見解をなぞる見解だ。 「正体不明船」とは、いかにも関心を引きそうなキャッチーな言葉だが、具体的には何を指すのか。メディアが取り上げるべきテーマだと思うが、この「正体」に言及したメディアはなかった。
「茂木外相弱腰」をニュースに
メディア報道を振り返る。 厳しい対中姿勢で知られる夕刊フジは11月25日、「中国外相、あきれた暴言連発」という記事で、王氏の領有権主張を「暴言」と批判。「菅政権は(暴言を)放置するのか」と、政府の「弱腰」を批判する記事に仕立てた。だが肝心の「正体不明船」が何なのかには一切触れていない。 一方、朝日新聞(11月27日朝刊)は王発言について、「26日の自民党会合で批判が噴出。茂木氏に対しても『なぜすぐに反論しなかったのか』との声が上がっていた」と、茂木氏の対応に自民党内で批判が高まっていることをニュースにした。 政治的ポジションが異なる両紙だが、共通して取り上げたのは茂木氏らの「弱腰」。肝心の「正体不明船」が何を指すかについては両紙とも一切伝えなかった。 中国が尖閣領有権を主張したのは1971年からで、領有権の主張は決して目新しいわけではない。中国公船の領海入りも、日本政府による尖閣3島「国有化」(2012年9月)以降、常態化している。いずれもそれ自体、大きなニュース価値があるとは思えない。
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