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Thursday, February 11, 2021

敏感ゆえの苦しさを知って 「HSP」への理解向け活動 - 朝日新聞デジタル

 生まれつき周囲の刺激や人の気持ちに敏感な特性を持つが故に苦しむ人たちの存在が注目されている。病気や障害ではなく、「HSP」と呼ばれ、海外の研究では5人に1人が当てはまるとされるが、理解が進んでいなかった。茨城県内で、ブログの発信や自助グループなど活動が広がり始めている。(片田貴也)

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 HSPを自認する水戸市に住む長池涼太さん(32)は、約2年前からブログで自身の経験をつづる。

 長池さんは、2011年に建設会社の事務職に派遣社員として働き始めた。書類作成や電話対応など複数の仕事を同時にこなせず、上司から叱責(しっせき)された。努力してもできずパニックになったこともあった。数カ月後には慢性的に下痢が続き、医師からはストレスが原因とみられる「過敏性腸症候群」だと診断された。派遣会社の担当者に相談したが「気にしすぎ」と返された。

 転職先の学習塾でも不調は続いた。

 同僚が上司に叱責されているのを見ると、自分も怒られているように感じた。教えている間も、上司を思い出して、集中できない。退職してアルバイトなどを続けた。

 HSPの存在を知ったのは18年。偶然ツイッターで「HSPはマルチタスクが苦手」という記事を見つけた。特徴が自分とあてはまった。「人と違う違和感の正体がわかって、楽になった」と話す。ブログで発信するだけでなく、昨年12月から水戸市内で月2回ほど交流会を開催している。

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 HSPの特性を持つ人やその子を持つ親たちのグループも増えている。

 昨年12月にひたちなか市で開かれた「お茶会」。女性7人が、HSPの特徴やそれぞれの対処法について語りあった。

 主宰したのは、自身も我が子もHSPの気質があるコンサルタント茅根泰子さん(52)とサロン運営安真理さん(52)。茅根さんの次男(11)は、小3のころから「怒り声などで学校が怖い」と訴え始めた。同級生が先生に怒られていると自分も怒られているように感じ、頰をつねられるなどの同級生のちょっかいも相手の気持ちを配慮して嫌と言えず、疲労感のある顔で毎日帰宅したという。

 茅根さんが周囲に相談しても「成長すれば治る、大丈夫」と言われ、病院もまわったが理由は分からなかった。HSPのことをネットで知り、多くの人に特性を知ってほしいと昨年9月から活動を始めた。これまで計約10回開催し、のべ50人超が参加した。

 昨年10月から参加する東海村の蛭田未央さん(37)もHSPの特性を持つ親の1人。小1次女は衣服の肌触りなど感覚が敏感で、フィットする服が苦手なため、2サイズほど大きい服を着る。当初は悩んだが、特性を知ることで料理やデザインなど感覚の敏感さを生かせるよう考え方を変えた。「同じ悩みを持つ子育ての先輩と話せる安心感がすごくある。理解が広がれば、良い特性に目が向くようになると思う」と話す。

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 HSPの相談を受ける真生会富山病院の明橋大二医師(心療内科)の話 HSPは気質で、病気や障害と異なり治療など医療の対象ではない。ただ、HSPの特性が一因となって精神疾患を発症している可能性もあり、カウンセラーや自助グループなどに抱え込まず相談することが大切だ。

 また教育現場では重要な概念になっている。周囲が無理解の場合、不登校につながることもある。この特性を持つ子が学校に行きづらくなる大きな要因には、先生のしかり声と給食がある。怒鳴ったり、味覚や臭いに苦手を訴えたりする場合は無理に食べさせないなどの配慮が必要だ。

 周囲の人はおおげさと思わず、訴えを信じて対応することが重要だ。HSPの人に必要な配慮はすべての人に必要な配慮で、HSPの人の訴えはすべての人が過ごしやすい社会になるきっかけになる。

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 HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン) 生まれつき音や光、臭いや人の気持ちなど敏感になる対象は人によって違うが、深く考える▽過剰に刺激を受けやすい▽共感力が高い▽わずかな刺激を察知する、の4点が共通する。1990年代に米国の心理学者が提唱し、近年では「繊細さん」などの名で注目される。子どもの場合は「HSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)」と呼ばれる。

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