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Monday, June 28, 2021

都議選はなぜ7月? - 東京新聞

新宿区の東京都議会議事堂

新宿区の東京都議会議事堂

 東京都議選が、7月4日に投開票される。同時期に大きな選挙がなく、有権者に風の変化に敏感な浮動層が多いため「国政を占うバロメーター」として、地方選では異例の注目を浴びるのが通例だが、そもそも、なぜ、都議選は「7月選挙」となったのだろうか。

◆昔「伏魔殿」と呼ばれていたから

 普段は超高層ビルの姿をしているが、有事となればロボットに変身して人々を脅威から守ってくれる。東京の都市伝説として語り継がれる「都庁ロボ」は、同人誌マンガの鉄板ネタだ。

 都庁舎を設計したのは、戦後建築界の巨人、丹下健三。メカニックな外観の面白さに目を取られていると気が付かないが、ここには民主主義を機能させるさまざまなメッセージが込められている。

 知事が率いる行政組織が入る本庁舎と、監視する議会が入る棟には「距離」がある。二つの建物の間は「都民広場」で、議会棟の中心にある丸窓は本庁舎の知事室付近にある丸窓と同じ高さで向かい合う。住民の直接選挙で別々に選ばれた首長と議員が、対等な関係にある「二元代表制」の理念が視覚的に感じられる。

広場をはさんで都庁第1本庁舎と向かい合う都議会議事堂(右)=本社ヘリ「あさづる」から

広場をはさんで都庁第1本庁舎と向かい合う都議会議事堂(右)=本社ヘリ「あさづる」から

 一九九一年に新宿に移転する前の都庁は、丸の内の東京国際フォーラムが立つ場所にあった。不名誉な愛称が流行語となったことがある。魔物がすむという意味の「伏魔殿」−。

 都議会の議長選を巡り汚職事件があった。「都議の頭、利権にマヒ」「議長選 一票の相場は20万円」。六五年の東京新聞の連載記事「暴露された“伏魔殿”の正体」は、おどろおどろしい見出しが並ぶ。

 都議会では歴代議長が改選されるたびに汚職のうわさが流れた。都議たちは「議長選にからむ金銭の授受は事件にならない」とささやきあっていた。記事では、不正が生まれる背景に、高額な交際費や、海外旅行に行ける特権、選挙で有利になる肩書が手に入ることを挙げている。

 十七人もの自民党都議が起訴された事件で「議会を解散して出直せ」という声が沸騰した。当時の法律は地方議会の解散は住民の直接請求(リコール)か不信任議決を受けた首長による対抗措置に限っていた。世論に押され、地方議会が自らの議決で解散できる特例法が国会で成立。都議会は六月、二年の任期を残して解散した。

 七月の出直し選挙では、社会党が初めての第一党に躍進。前年に結党したばかりの公明が第三党の座を確保し、民社党が初議席を得た。二年後の知事選での美濃部亮吉氏の当選で全国に広がる革新首長のブーム、国政の多党分立時代の到来を先取りした。

 都議選が統一地方選から外れて知事選と別々に行われるようになり、時期の違いが選挙で反映される「民意」にズレをもたらした。

 知事と議会に、独特の緊張関係が生まれるようになった。六九年の都議選は美濃部氏を支える社会党が惨敗、自民が第一党に復帰。知事は七九年に三期で退くまで、議会対策に悩まされた。九五年に知事に当選した青島幸男氏の時代は「オール野党」と呼ばれた。石原慎太郎氏は政党の推薦なしで三百万票を獲得して再選した二〇〇三年の選挙の後、自民との確執が激しくなり、〇五年、側近の副知事の更迭に追い込まれた。

 小池百合子知事が一六年の当選後、当時第一党の自民と攻防を繰り広げていたことは記憶に新しい。最近は衝突が見られなくなっていたが、それは健全な二元代表制の姿なのかどうか。都議選では首長と議会の関係のあり方についても論戦が期待される。

◆「黒い霧」も先取り

ことの始まりは1965年の都議会解散だった

ことの始まりは1965年の都議会解散だった

 ほとんどの道府県議会選挙は4年に1度、4月の統一地方選で行われている。都議選のように、統一地方選と時期がズレているのは茨城、沖縄、岩手、宮城、福島の5県。茨城県は、都議会と同様に汚職事件を受けて1966年に議会が自主解散したため。沖縄県は72年の本土復帰に伴う。岩手、宮城、福島県は2011年4月に予定していた選挙を、東日本大震災の影響で秋に時期を遅らせた。

 都議会の汚職事件は、松本清張のノンフィクション作品「日本の黒い霧」にちなみ「黒い霧事件」、自主解散は「黒い霧解散」と呼ばれた。

 汚職事件で国会議員が逮捕されたり、閣僚が自分の選挙区の駅に急行が停車するよう国鉄に圧力をかけたりするなどの政界不祥事が相次ぎ国会が混乱し、66年に佐藤栄作首相が衆院を解散したのも「黒い霧解散」と呼ばれたが、1年前の都議会の解散の方が「元祖・黒い霧」だ。その後、著名選手の関与でプロ野球界を揺るがした八百長スキャンダルも「黒い霧事件」と呼ばれた。

 文・浅田晃弘/写真・千葉一成、嶋邦夫

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