米東部ニューヨーク市で22日、市長選の民主党予備選が行われる。新型コロナウイルス禍から復興する米最大都市の新リーダーを事実上決める戦いで、出馬13人中、有力候補とされる4人はアジア系と黒人、女性という従来の政治では少数派。人種や性差別、憎悪犯罪など全米が抱える課題を映す多様な顔触れで、誰が勝利しても米社会の新たな分岐点となる。(ニューヨーク・杉藤貴浩)
◆「多様性の街」
予備選まで1週間となった15日、期日前投票に訪れた白人女性(71)は「ここは多様性の街。有力候補がさまざまな人々を代表するのは良いことだ。特にアジア系への暴力が目立つ時期だから」と話した。
意中にある候補は台湾系実業家のアンドリュー・ヤン氏(46)。一時名乗りを上げた昨年の大統領選で、個人に最低限の現金を給付するベーシックインカムを掲げ知名度を高めた。コロナ前に4%未満だった市の失業率が10%超となるなか、予備校経営で成功し、若者の起業支援NPOを組織した手腕に期待が集まる。
当選すれば同市長で初のアジア系となり、頻発するヘイトクライム(憎悪犯罪)と戦う象徴ともなる。ヤン氏は「ヘイトはこの街の疫病だ」と撲滅を訴える。
◆「差別と戦う」と訴える
全米各地と同様、経済危機を背景に治安全体も悪化しており、市内の5月の銃撃事件は前年同月比74%増。黒人として史上2人目の市トップを目指す市内ブルックリン区長エリック・アダムズ氏(60)は元警官という経歴が売りだ。
「人種差別と戦うために警官になった」と強調。貧困家庭に育ち、警官の理不尽な暴力にも遭ったという経歴は、全米で盛り上がる「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大切だ)」運動の流れにも乗る。
女性の有力候補は、元市幹部キャサリン・ガルシア氏(51)と公民権活動家で黒人弁護士のマヤ・ワイリー氏(57)。進歩的とされるニューヨークだが、現職の109代デブラシオ氏まで市長はすべて男性。大統領職と同じく性別の壁は厚い。
豊富な行政経験を持つガルシア氏は、女性の社会進出を阻むガラスが本人の前で砕け落ちるネット動画を公開。ワイリー氏は「差別と戦うために生涯をささげてきた」と訴え、人種やジェンダー問題に敏感な若者らに高い人気を誇る地元の女性下院議員オカシオコルテス氏の支持を受ける。
◆コロナ禍で少数派の課題浮き彫り
ニューヨーク市立大タフト政府研究所のマイケル・クラスナー共同所長は、こうした候補が注目される背景について、コロナ禍で貧困や差別、女性の失業など少数派(マイノリティー)が抱える課題が浮き彫りになったことを挙げる。
「トランプ前大統領の影響が思わぬ形で出た」とも指摘。白人優越主義や女性蔑視をあおるような言動を繰り返したトランプ政権の4年間が「マイノリティーに危機感を与え、政治意識を高めた」と分析した。
ニューヨーク市長選 市長任期は4年。連続3選禁止のため今年末まで2期目を務めるデブラシオ市長は出馬していない。同市は民主党が強いため、同党の候補者を決める6月22日の予備選の勝者が11月2日の本選で共和党候補に勝つとみられている。死票を減らして民意を広くすくい上げるため、今回から有権者が最大5人の候補に順位を付け投票する新方式が導入され、結果の予測が難しくなっている。
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