
政府が目標とする二〇五〇年までの脱炭素社会の実現に向け、環境対策の充実や投資を企業に促す流れが加速している。国の来年度予算案の概算要求には、温室効果ガス削減に向けた事業を支援する関連費用が盛り込まれた。県や関係団体、金融機関は「カーボンニュートラル」を目指す潮流に県内企業が乗り遅れることのないよう、態勢を強化する必要がある。
閣議決定された政府の成長戦略には、脱炭素社会実現のため産業構造や業態の転換を後押しすると明記された。ガソリン車製造に関わる業者の電動部品生産への挑戦、スタンドのEVステーション化が事例に挙げられている。こうした動きを背景に、環境省は先月締め切られた概算要求で、民間の再生可能エネルギー事業などに投資するファンドの原資として二百億円を計上した。日銀は金融機関の気候変動問題に対応した投融資で、日銀からの原資貸付利率をゼロにする。新制度の骨子を発表した黒田東彦総裁は、二酸化炭素排出削減への投資や人材確保に向けた計画策定を企業に期待した。
脱炭素化は各国、各中央銀行共通のテーマで、さまざまな施策が矢継ぎ早に打ち出されている感が強い。国を挙げた急速な動きに、戸惑いを覚えている企業経営者も少なくないはずだ。工場や商業施設には温室効果ガスの排出抑制が求められる。運送業者はディーゼル車から電気自動車などへの切り替えに迫られ、繊維業界では生地など素材リサイクルに向けた設備投資が必要になる可能性も生じるだろう。いずれも多額の費用負担を伴う課題で、資本や社員が限られる中小企業には経営の重荷となる懸念がある。
こうした状況下では、関係機関が一体となり中小企業を支援する取り組みが欠かせない。県や市町村、商工会義所・商工会など経済団体は業界ごとに求められる対応策、国の支援制度などをきめ細かく周知してもらいたい。再エネ関連事業への参入を目指す企業には、郡山市の産業技術総合研究所(産総研)の知見を広げてほしい。先月発足した「ふくしま知財戦略協議会」は環境分野での新たな技術開発の可能性と知的財産化の方策を探り、金融機関は日銀の新制度を活用して低金利の融資制度を設けるなど、取引先を下支えすべきだ。
県内の中小企業では後継者不足が深刻で、事業承継の円滑化も課題となっている。脱炭素への対応でつまずいて廃業や倒産が増え、「産業後進県」に陥る事態は避けねばならない。(菅野 龍太)
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