Pages

Saturday, December 11, 2021

なぜ人材の「越境」が国際競争力を強化するのか - newspicks.com

2021/12/7

NewsPicks Brand Design editor

世界中の企業がニューノーマルに向けた動きを加速させている。

もちろん、厳密に「新型コロナウイルスの感染流行が収束した」わけではない。

しかし、先進的な企業は、コロナ後を見据えた強固な組織づくりや制度の改革に着手し、すでにビジネスパーソンの働き方にも変化が出ているのは周知の事実だ。

本記事ではグローバルな視点で多様なクライアント企業のリーガルサポートを行ってきた、ベーカー&マッケンジー法律事務所の弁護士、桐山大地氏にインタビューを実施。

コロナ後に向けた世界の「働き方」の潮流を踏まえ、日本企業が今後どう動くべきかを聞いた。

企業は「再生」のフェーズに入りつつある

コロナ禍は、世界中の企業にとって「働き方」を改めて考えるきっかけとなった。

国内では「ステイホーム」の大号令に戸惑いつつも、「とにかく業務を滞らせない」という一心で、必死にリモートワークに対応した企業も多いだろう。

そこから1年半以上が過ぎ、企業は「対応」する段階から、「その先」を見据える段階に移行しはじめている。

「コロナ禍以降、我々は『3R』をキーワードに、法律的な側面から企業をサポートしてきました」

そう語るのは、ベーカー&マッケンジー法律事務所(以下、ベーカーマッケンジー)の桐山大地氏だ。

3Rとは、業界に先駆けてベーカーマッケンジーが生み出した、コロナのような危機的状況の舵取りの指針となるワークフレームのこと。「Resilience(反発)」「Recovery(回復)」「Renewal(再生)」それぞれの頭文字を取っている。

コロナ禍のような社会の混乱に直面すると、企業は「反発→回復→再生」のフェーズを辿る。

ベーカーマッケンジーは、業界屈指のグローバルのネットワーク、70年の歴史という強みを活かし、各フェーズ間の移行がスムーズに進み、強固な組織に変容を遂げられるよう、クライアント企業をサポートしている。

たとえばコロナ禍初期は、「反発」のフェーズ。社会が混乱していて、企業活動が萎縮した結果、倒産という可能性も十分にある。

そこで、リモートワークへの移行など、喫緊の課題に対してクライアント企業ごとに最適な対応策を考案し、コロナの影響を最小限にできるようアドバイスを行う。

「コロナの山を乗り越えたところでオフィスに人が戻ってくると、今度は『マスクのルールはどうするか』『社員を週何回出社させるべきか』『ワクチンを義務化してよいか』といった諸問題が出てきました。これが『回復』のフェーズです。

回復フェーズに対応できた企業は、その経験から得たデータや経験を活かして、戦略的にビジネスモデルや組織、働き方の変革に向かう『再生』のフェーズに入ります。

地域差はあるものの、既に日本も含め世界中の多くの企業が『再生』のフェーズに移行していると、我々は考えています」(桐山氏)

今、社会はコロナ収束に向けて動いている。しかし、これをただの「大変だったこと」で終わらせてはいけない。むしろコロナがもたらした働き方の変化を好機と捉え、大きな躍進に繋げるべきなのだ。

なぜ越境ワークで企業の人材獲得意識が変わるのか

再生フェーズを迎えるにあたり、各企業は今、さまざまな「新しい働き方」の形を模索している。その代表例が「越境ワーク」だ。

既に自宅からリモートで働く「国内の遠隔勤務」は実現しているが、越境ワークはその次のステップ。インターネットを介して「国境を超えた遠隔勤務」を行うのだ。

「たとえば、元々、インド人エンジニアは米国に移住して働くことが多かったのですが、コロナの影響で人流がストップしました。

その結果、インド在住のままで米国企業に対して働く『テレマイグランツ(デジタル移民)』の流れが加速しました。

これらは主にインターネット上のプラットフォームを介したマッチングによるものが多いですが、最近は従来からの人材紹介会社も、越境ワークという就労形態を含めた紹介を始めています」(桐山氏)

インドに住みながら米国企業で働くことで、インド国内企業よりも良い給料を得ることができる。

反対に、米国企業からすれば、優秀なエンジニアを自国に招かずとも低コストで雇えるので、国際競争力が高まる。越境ワークには、双方にメリットがあるのだ。

また、メリットはコスト面だけではない。より柔軟な働き方を求める優秀な人材の採用や、繋ぎ止め(リテンション)に対しても強力な求心力として働くという。

越境ワークを認めれば、配偶者の転勤や理想的な生活環境を求めて他国での生活を選択するといった理由で優秀な人材を失わずに済むのだ。

越境ワークができるようになったことで、今後はよりグローバルな人材獲得意識が加速していくという。

コロナが収束に向かい、今後ある程度国家間の移動が容易になれば、日本においても「シンガポールに住みながら、東京の企業で働く」「東京に住みながら米国企業で働く」といった事例が増える可能性は十分にある。

しかし桐山氏によれば、日本企業はそうした世界的な潮流に乗り遅れる可能性があると指摘する。

「1つ目の要因は言語です。米国・英国をはじめとする英語圏の企業にとっては、越境ワークにより、インドや豪州、シンガポール等の世界中の巨大な労働市場へ即時にアクセスできます。

一方、日本企業が日本語人材を求める場合、世界的に見ればマイナーな日本語という言語も相まって、そもそも『越境してまでグローバルで人材を確保しよう』というインセンティブが生じにくい。

2つ目の要因は気質です。日本企業の仕事の進め方は『完璧主義』の傾向が強い。石橋を叩いて渡る文化に象徴されるように最初の一歩がタイムリーに踏み出せず、ノウハウを蓄積することが難しいのです」

たしかに、日本企業で「越境ワークにチャレンジしよう」という動きが出ても、最初の一歩を踏み出すまでに時間がかかることは容易に想像が付く。

ノウハウとはまさに「トライアル&エラー」の産物だ。とりあえず一歩踏み出し、失敗してもその原因を突き詰めて修正を続けることで蓄積されていく。

「今後、越境ワークのような新しい働き方は雨後の筍のように現れてきます。我々は、多くの日本企業が最初の一歩を躊躇したままでは、国際競争力を失っていくのではないかと危惧しています」(桐山氏)

国境をまたがる法務・税務は、正直「めんどくさい」

もちろん、新しい働き方への取り組みに後ろ向きな日本企業ばかりではない。ベーカーマッケンジーにも、「新しい働き方に挑戦したい」という相談が多数持ち込まれている。

「いくらトライアル&エラーがノウハウの蓄積に重要と言えど、法律のように専門知識がないと難しい分野はあります。そこで、我々がこれまで蓄積してきた『新しい働き方についての法律的なナレッジ』の部分でサポートを続けているのです」(桐山氏)

身近な例では、リモートワークを導入する際に「労働時間やパフォーマンスの管理」「安全衛生の管理」「費用負担」「情報セキュリティにどう対応するのか」といった問題がある。

こうした諸問題への対応には、法律的な知識が必要だ。越境ワークともなると、話はさらに複雑になる。

istock/west

「私がこれから、日本に住みながらシンガポール企業で働くと仮定しましょう。企業との契約時に、『雇用契約はシンガポール法を適用します』と書けば、働く場所が日本であっても、契約関係については基本的にはシンガポール法が適用されます。

ただし、その場合でも特定の事項については日本法が適用され得ることには留意が必要です。例えば、もし私がクビになった場合には、私に有利な日本法の適用を主張して解雇を争うことができます。

このように、両国の法律の適用関係を正確に見極めることが必要です。これが越境ワークの難しいところで、専門性に裏付けされた両国弁護士の連携によるサポートがないとかなりハードルは高いでしょう」(桐山氏)

他にも税務や社会保障、ビザ関連など、越境ワークを実施するにあたって解決しなければならない問題は山積みだ。

特に税務は複雑で、例えば日本に住みながらシンガポールの企業に勤める場合、仮に給与を社員のシンガポールの銀行口座に入金したとしても、日本の国内法では「給与は日本国内で発生したもの」と取扱われ、日本においても確定申告が必要となるという。

この場合には両国間の租税条約の検討する必要がある上、別途法人税との関係では日本における課税リスク(PEリスク)についても精査する必要があるため、難易度はさらに上がる。

そうした諸問題にノウハウがない中で取り組もうとすると、「正直かなり『面倒くさい』」と桐山氏。法律関係の煩雑さがネックになって、一歩踏み出せない企業も多いのだろう。しかし、光明もある。

「クロスボーダーの法律関係は煩雑ですが、ある特定の国家間の適用法の関係は、法改正がない限りほぼ固定。つまり、一度リーガルサポートを受けて適用関係を整理してしまえば、フォーマット化してしまえるのも越境ワークの特徴です」(桐山氏)

istock/kyonntra

フォーマット化しておけば、例えばシンガポール在住の人材を雇用して越境ワークを行うケースと、日本人がシンガポールに移住して現地から越境ワークするケースは、フォーマットの微調整だけで済む。

応用を利かせつつ、特殊事情があれば反映させるなどの作業を繰り返すことで、次第に運用の仕組み化やナレッジの蓄積ができてくるのだ。

「最初の1歩」を法律の力で後押ししたい

このような国をまたぐ雇用契約のサポートは、ベーカーマッケンジーならではの強みだ。

もちろん、「米国だけ」「ヨーロッパだけ」と地域を絞れば、他の法律事務所でも対応することはできる。しかしベーカーマッケンジーは46の国と地域に76ものオフィスがあり、そのそれぞれに現地の法律に精通した弁護士が所属している。このネットワークは他の追随を許さない。

「通常、国際法律事務所だと、どこかにヘッドオフィスがありトップダウンの組織体制となるため横の繋がりは希薄です。しかし、ベーカーマッケンジーでは各オフィスに優劣はなく、フラットに連携できるのも特徴の1つです。

たとえば『インドネシア在住の人材を雇って越境ワークをしたいから、何を準備すればいいか教えてほしい』という要望があれば、すぐに現地のオフィスに連絡してその国固有の注意点など、先行事例に照らし合わせたオーダーメイドのアドバイスが可能です」

また、越境ワークには税務や社会保障、ビザ関連など複数の視点からのアドバイスも必要となるが、そうした法務以外の問い合わせも、一気通貫で対応できるという。

「ベーカーマッケンジーでは幅広い法分野を専門とする弁護士に加え、国際法務に精通した税理士や、入管規制に精通した行政書士などもおり、クライアント企業が必要とするサービスをワンストップで提供することができます」(桐山氏)

つまり「多拠点でのグローバルな横の連携」と「幅広い業務分野の密接な連携」。これらがクロスオーバーしたリーガルサポートを提供できるのが、ベーカーマッケンジーの強みということだ。

「新しい働き方」に対する企業としての意欲も、ベーカーマッケンジーの特徴だ。

実は桐山氏自身も、2020年5月からベーカーマッケンジーの海外4拠点(サンフランシスコ、シドニー、シンガポール、香港)を1年間かけて移動しながら遠隔で東京事務所の仕事を行う予定だった。コロナで中止せざるをえなかったが、これはまさに「新しい働き方」の実践と言える。

「結果的には残念でしたが、企画や準備を自分のこととして当事者意識を持って行えたのはいい経験でした。越境ワーカーとして働くときにどんな困難があるのか、細かい部分の課題に気づくきっかけにもなりました。

他にもAI との共生やギグワーカー等の柔軟な就労形態の活用など、新しい働き方に関する世界の動きは目まぐるしいものがあり、我々も日々クライアントと共に進化し続けています。

法律面のハードルの高さからこうした動きに対して二の足を踏んでいた企業様には、是非相談してもらいたいですね」(桐山氏)

急速に雇用環境が進展する状況下でも、ベーカーマッケンジーのような、グローバルネットワークに強みを持つ法律事務所にリーガルサポートを依頼できれば、安心して越境ネットワークを構築できるかもしれない。

撮影:小池彩子
デザイン:SLOW inc.+Seisakujo inc.
執筆・編集:中野佑也

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( なぜ人材の「越境」が国際競争力を強化するのか - newspicks.com )
https://ift.tt/3ELDlzz

No comments:

Post a Comment