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Friday, February 11, 2022

(社説)台湾輸入再開 日本産規制撤廃の機に:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル

 十分ではないかもしれない。だが、福島第一原発事故後の日本産食品に対する海外の規制の是正に向けた大きな一歩になりうる。台湾が発表した輸入禁止措置の大幅緩和のことだ。

 台湾は事故直後に、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産の酒類を除く食品の輸入を禁止。放射性物質の汚染調査や除染が進展したにもかかわらず、これまで規制を見直さずにきた。一時、輸入再開を本格的に検討したが、食品の安全に敏感な世論の反対で頓挫した。

 一転、今月下旬から、キノコ類や野生の鳥獣肉など一部の品目を除いて、輸入を再開するという。台湾は日本にとって4番目の農林水産物の輸出先だ。今回の措置は、被災地の復興に寄与することが期待できよう。

 ただ、5県産食品には、放射性物質の検査報告書の提出が義務づけられた。業者に負担がかかるのは残念だ。

 原発事故を理由とする日本産食品の輸入規制は台湾や中国、韓国を含む14カ国・地域で残っている。台湾の方針転換を機に、規制撤廃に向けた交渉を加速したい。

 台湾の輸入再開の背景には、申請中の環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟に対し、日本の支持をとりつける狙いがあるとみられる。同様にTPP加盟を申請している中国や、加盟に意欲を示す韓国との協議を進める好機になろう。

 規制が残る国・地域の中でも特に厳しいのが中国だ。水産物を除く食品の多くの輸入を、福島周辺だけでなく、日本全国から実質的に認めていない。

 松野博一官房長官は「日本産食品の安全性について科学的根拠に基づき説明し、早期撤廃を強く求めてきた」とする。確かに、日本の食品の出荷基準は、国際基準よりも厳しい。

 ただ、「科学的に安全」と主張するだけでは相手国の納得は得られないというのが、これまでの交渉の教訓ではないか。

 世界貿易機関(WTO)のルールは、国民の命に関わる食品の輸入規制について各国に広範な裁量を認めている。必ずしも国際基準に従う必要はなく、どれだけのリスクを許容するのかはその国の社会的合意で決まる。実際、WTOの上級委員会は19年に、韓国の輸入規制を事実上容認した。

 日本は原発事故で国際社会の信頼を失った。それを取り戻すには、相手国の声に謙虚に耳を傾け、各国との間に信頼関係を築くことが欠かせない。

 福島第一の処理水の海洋放出には、周辺国から懸念が示されている。実施するのであれば、透明な情報開示と丁寧な説明が求められるのは当然である。

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