トイアンナさんによる連載「キャリアの傷痕」第19回。この連載では「キャリアに傷がない人間なんていない。でもそこから得る“ジョイ”があるはず」という観点で分析・取材を進めていきます。
第19回は、リーマン・ショック期に新卒就活で辛酸をなめたトイアンナさんが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が転職へどのような影響をおよぼすか予想します。
新型コロナウイルスの影響で、市況に敏感な外資系コンサルティングファームの採用が減少
こんにちは、トイアンナです。私は就活支援を始め、今年で9年目となります。また、自身の就職活動時にはリーマン・ショックが続いており、この数年の転職ブームとは対照的に辛酸をなめさせられました。
今回はその経験と、現在の就活関係者から聞こえる情報をもとに、転職市場に起きる影響をあるていど予測できればと思います。
まず、不況の気配にもっとも敏感な外資系コンサルティングファームにおいて、採用数を絞る気運が高まっています。コンサルティングファームの依頼主となる大手日系企業は3月を期末に設定していることが多く、そこで契約更新・保留を決断する企業が多いのですが、そこで保留となった案件が多いと周囲の社員から聞こえています。
実際、SNSで“アベイラブル”(Available/プロジェクトが決まっていない、の意味。不況で案件がないときだけでなく、休養期間も含めた”空き”を指す言葉)が増えているとの話題が上っています。
これがクライアント企業の期末に合わせた単なる有休休暇ならよいのですが、ここ数年はコンサルティングの案件が増加していたこともあり、周辺では「休みを取りたくても取れない」という悲鳴のほうが多く聞かれていました。そのため、アベイラブルの増加は余剰人員が社内に増えたと見てよいでしょう。
外資系コンサルティングファームでは、この数年、数百人単位の大規模な新卒採用が行われてきました。しかし2020年の採用数を増やすとアベイラブルな人材が増えてしまうため、採用減が予想されています。
新型コロナウイルスの影響で、大企業の未経験/ポテンシャル求人が減少する可能性
さて、コンサルティングファームへ支払われる予算が削られたということは、大手企業が緊縮財政に入ったことを暗示します。いつ新型コロナウイルス感染症が沈静化するか見えないこの状況で、出費を減らすのは合理的な判断でしょう。
緊縮財政中の企業は、採用人数も絞る傾向にあります。おそらく企業は急ぎ必要なスキルを持つ人材の採用は続けますが、業界未経験者へのポテンシャル採用は激減すると予想したほうがよいでしょう。
転職エージェントとして勤める社員は「いま、転職活動を急ピッチで支援している。おそらく今が最後に未経験者を転職先へねじこめる時期。これを過ぎたら、スキルのない中途や、部署の異なる転職は難易度がかなり高くなる」とあせりを見せています。
私自身も、会社員として働いた経歴があるためいくつか転職エージェントとつながりが残っているのですが、この数年音信不通だったエージェントから急に複数連絡が来ています。転職エージェントは転職を支援して手数料を貰うビジネスですから、いまノルマを達成しないと売上が立たないと見たのでしょう。
新型コロナウイルスの影響を受ける前に転職するならラストチャンス、かつ困難な道を覚悟せよ
最近、新型コロナウイルスに対する自社の反応に失望し、転職したいとご相談をいただくことが増えました。
幹部社員だけリモートワークで、現場社員だけ意味もなく出社させられている
高齢者の家族がいるからリモートワークをしたいと相談したところ、高齢者の家族をどこかへ引っ越しさせろと言われた
4月にも入って、未だに飲み会をやっている
など、確かに失望させられるであろう理由であり、転職したい気持ちは理解できます。
一方、転職の間口はどんどん狭まっています。いまは、転職で飛び込むならラストチャンスです。
また、転職後に険しい道が待ち受ける覚悟も必要です。不況では社内稟議が厳しくなり、大規模プロジェクトが小さなテストプランにとどまったり、すでにある案件の継続だけになったりします。そうすると、転職者のスキルを積める経験が減ってしまいます。転職者は最初の数年でスキルを積めなければ、次の好景気が来てもほかのプロジェクトを任せてもらえず、キャリアで苦労しやすくなります。
私の周りでも外資系コンサルティングファームへ転職する方はいらっしゃいますが、いずれも過去に同業界の経歴があるなど、歴戦の方々ばかり。現時点では、未経験業界・職種への転職はおすすめしづらい状況です。
もし転職を検討されるのでしたら、なるべく早く動くこと。そして、同業界や同じ職種での転職にとどまるようオススメいたします。企業がコンサバに動くときは、我々もコンサバにキャリア形成すべきなのです。
リーマン・ショック期にコンサルティングファームに勤めていた方は、口々に「あのときの傷痕がなければ、自分もまさか採用がなくなったり、レイオフがあるかもしれないなんて警戒できなかっただろう」とおっしゃっています。確かに、私が新卒のとき、コンサルティングファームの新卒採用人数は企業によって10名前後まで絞られたこともありました。
この数年、転職市場は好景気が続いていました。ですからみなさんも「まさか」と感じられるかもしれません。ですが、警戒して損をすることはありません。自分のキャリアを守り育てるために、最大限の対策を取ってください。
この記事を書いたライター
慶應義塾大学卒。P&Gジャパン、LVMHグループでマーケティングを担当。独立後は主にキャリアや恋愛について執筆しつつマーケターとしても活動。新著『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』が2万部を突破。 ブログ:「トイアンナのぐだぐだ」 https://ift.tt/1eirs7s Twitter: https://twitter.com/10anj10
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