「新技術でつくられたメッセンジャーRNAワクチンが成功すればワクチン界が一変するかもしれない」。新型コロナウイルスワクチンの開発に取り組む熊本市の医薬品製造販売、KMバイオロジクスの永里敏秋社長は昨年末のインタビューの際に漏らした。世界的なワクチン開発競争に身を置くだけに、焦燥感がうかがえる瞬間だった。
同社が開発しているワクチンは毒性や病原性を失わせたウイルスからつくり出す。不活化ワクチンと呼ばれ、2023年度の実用化を目指している。一方、メッセンジャーRNAワクチンは米ファイザー社などが開発し、既に海外で接種が始まっている。日本政府は2月中旬にも医療従事者への先行接種を始めたい考えで、厚生労働省による承認審査が進んでいる。
KMバイオは化学及血清療法研究所(化血研)時代からインフルエンザや日本脳炎で不活化ワクチンの製品化実績がある。新技術を使ったワクチンより安全性や有効性で優位性があるとみて、不活化ワクチンで開発競争に挑んでいる。
同社は血漿[けっしょう]分画製剤で不正が発覚した化血研の主要事業を引き継ぎ、明治グループなどによって設立された新会社だ。それから2年半。取材で何度も訪れたが、厳重に管理された設備とともに熟練の技術者の存在を垣間見た。新型コロナワクチンの開発は同社の存在感を示す絶好の機会となるに違いない。
永里社長はインタビューで「製品化の前例の多い不活化ワクチンは副作用に敏感な日本人に受け入れられやすいのではないか」と強調した。製造にはウイルスの培養が必要なため時間は若干かかるが、開発のステージは着々と進んでいる。信頼性の高いワクチンが熊本から生み出されることを期待しながら、製品化までの過程を報じたい。(政経部・田上一平)
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