アカマイテクノロジーズ(アカマイ)はこのほど、オンライン上で記者会見を開催し、2021年の事業戦略を打ち出した。冒頭、アカマイテクノロジーズ職務執行者社長の山野修氏は、「アカマイの観測するトラフィックデータの伸びから見ても、社会のデジタル化は顕著だ。新型コロナウイルス感染拡大といった逆境において、私たちは真のデジタルライフに大きな一歩を踏み出した」と胸を張った。
2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響や働き方の見直しが、世界中のデジタルシフトを加速させた。日本でも2度の緊急事態宣言を受けて、テレワークを実施する企業が増え、オンラインで娯楽やショッピングをする利用者が増加した。
こうした背景のもと、インターネットを支える事業を展開する同社は、売上を堅調に伸ばしている。グローバルでの売上高は前年比11%増の32億ドル(約3360億円)。特にセキュリティ分野の成長が大きく、前年比25%増の10億ドル(約1070億円)を超えたという。
国内においても、巣ごもり需要に関連したメディア配信、テレワークの増加とゼロトラスト市場の急成長に関連したリモートアクセス製品、サイバー攻撃の増加によるセキュリティ意識の高まりに伴うセキュリティ製品の売上が成長している。例えば、同社のゼロトラスト型リモートアクセス製品の「Enterprise Application Access」の売上は、前年比約2.7倍の成長となっている。
2021年になった現在においても、COVID-19感染拡大が収まる見通しは立っておらず、今後ますますデジタル化は進むと考えられる。山野氏は、急速に進むデジタル化において、トラフィック急増への対応、アタックサーフェスの変化によるサイバー攻撃の増加などが、今後の課題となってくると説明した。
これらの課題に対応するため、同社はセキュリティ事業をさらに強化する。2021年は、特に「アイデンティティセキュリティ」「APIセキュリティ」「SASE (サシー:Secure Access Service Edge)」「エッジコンピューティング」の4分野を重点的に強化する。
「ネットワークセキュリティだけでなく、今後はIDが重要になってくる。統合化されるIDセキュリティの強化を主導していくトップリーダーを目指す」と、山野氏はアイデンティティ情報の価値とセキュリティの見直しが必要であると説明した。
同社は現在、Webアプリケーションファイアウォールや、ボット対策、不正IPアドレス検知といったセキュリティソリューションを提供しているが、これらのラインアップにIDを守るための機能を今後追加していくとしている。
また、昨今攻撃が急増しているAPIのセキュリティも強化する。具体的には、サイトに放置されているAPIの探索支援といったAPIディスカバリーサービスや、APIサーバに対するDDoS、脆弱性攻撃、不正ログインなどを防止するサービス、セキュリティとパフォーマンスを考慮したAPI認証インフラを今後提供していくとのことだ。これにより、APIトラフィックの改善とAPIを標的とした攻撃からの防御と強固な認証認可の実現につなげる。
さらに、今後も広がりを見せると予想される社員のリモートアクセスを支援するため、同社は、SASEも重点的な分野であるととらえている。SASEとは、ユーザーやデバイスが時間場所問わず、クラウド上のアプリケーション、データ、サービスに安全にアクセスできるようにするセキュリティフレームワークのこと。
同社は、ネットワークとセキュリティの融合を分散エッジで実現し、テレワーカーの社内システムの接続およびインターネット接続の両面の保護につなげるとしている。また、顔認証や指紋認証などを組み合わせた多要素認証の新製品を追加し、既存認証の課題解決を支援する。
エッジコンピューティングに関しては、エッジでのアプリケーション開発の支援を強化していく方針。近日中に発表するという「EdgeWorkers」は、開発者が独自のコードを直接アカマイのプラットフォーム上でサーバレスで実行することを可能にする。32万台を超えるコンピュート基盤を構築しており、アプリケーションをエッジ上で処理するため低遅延を実現するという。
また、同じく近日中に発表される「EdgeKV」は、グローバルに分散されたキーバリュー型のデータベースで、永続的データを保持することが可能とのこと。同社は今後、「EdgeWorkers」と「EdgeKV」を組みわせ、中央集中型のクラウドの多くの処理がエッジにオフロードすることを可能にし、設計上のリアルタイムな課題の解決を目指す。
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