大相撲春場所で3度目の優勝を果たした照ノ富士(29=伊勢ケ浜)の大関復帰が決まり、部屋のおかみの杉野森淳子さんが、師匠の熱意と照ノ富士の変化を振り返った。都内の部屋で昇進伝達式が行われた31日、代表取材に応じた。
照ノ富士は両膝のけがや内臓疾患に苦しみ、17年秋場所を最後に大関から陥落して、19年春場所には序二段まで番付を下げた。淳子さんが印象に残っているのは「幕下に落ちたくらい」の時期だったという。照ノ富士が引退の意向を伝えに師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)のもとに訪れて、そのたびに引き留められた。
淳子さんはそのたびに席を外していたが、ソファで会話を交わす2人の姿が「印象的」と振り返る。淳子さんによるとその場面は5、6回は見られたという。「そうすると(照ノ富士が)またうなだれて戻っていくというのを繰り返し見てきたので、本当にあの時は今があるって想像できなかった」。
1回の説得の時間は1時間ほど。粘り強く照ノ富士を説得する伊勢ケ浜親方の姿に「そこはすごいなと思いましたね、主人はやっぱり。多分ここでやめたら、言い方は変ですけど、やさぐれてしまうみたいな、それだけが残ってしまうからって。それを食い止めたかったんじゃないですかね」と察した。
照ノ富士の変化を感じたのは、関取復帰を果たした昨年初場所ごろ。「すごく精悍(せいかん)な、全部そぎ落とされたみたいな。(それまでは)ブヨブヨ(した体形を)していたというか、序二段に落ちていた時は湿疹もできていましたし。そういうものを全部出したって感じで」。無給で付け人もいない幕下以下での生活は、1年半以上も続いた。淳子さんは「まわしを持って土俵入り(場所入り)するのは恥ずかしかったと思いますけど、それをよく乗り越えてくれたと思います」と、照ノ富士をたたえた。
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