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Thursday, March 24, 2022

日本の胃袋、鷲摑みの秘密~最強「国民食」スペシャル~:読んで分かる「カンブリア宮殿」 - テレビ東京

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ミシュラン店も回転に!?~高級寿司が日常食になるまで


東京・渋谷区の表参道にできた「廻転鮨銀座おのでら本店」。つくったのはミシュランの星を持つ寿司の名店だ。高級店の味わいを気軽に楽しめるようにとオープンした。

この日、振る舞われたのは茨城県産「天然ヒラメ」(620円)。甘みのあるプリプリの歯ごたえ。次々と流れてくる目移りしそうなネタの数々に、思わず皿が積み上がっていく。「回転寿司は国民食だと思っています、非常に魅力的な業態だと感じています」(ONODERAフードサービス・長尾真司社長)

回転寿司の始まりは1958年、東大阪市に開業した「廻る元禄寿司」。飲食店を営んでいた白石義明が、寿司をもっと気軽に食べてもらえないかと、たまたま見学に行ったビール工場の流れる生産ラインを見て、動くレーンを思いついた。

その存在を世に知らしめたのは1970年の大阪万博。世界中から未来を先取りしたサービスが出品される中に「廻る元禄寿司」も出店。アトラクションのように寿司が回転する様子が注目の的となった。

その後、膨大な数の外食が参入、回転寿司は驚異的な進化を遂げる。

「くら寿司」が1987年に開発したのは、ファミレスのようなボックス席の合間にレーンを走らせる形式。一気に家族連れをつかんだ。さらに、食べた皿を回収口に入れるとレーンの下にある水路を流れ、あっという間に洗い場まで届く水回収システムも開発した。

一方、「スシロー」は2002年、皿の裏にICチップをつけ、自動廃棄や流れる皿をコントロールする総合管理システムを開発。効率化と低価格を推し進めた。

こうして、かつて高級だった寿司は、愛される国民食となったのだ。

その「スシロー」は、コロナ禍でも攻めに攻めまくった。

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東京・葛飾区のJR亀有駅構内に大行列を作るのは、改札の真横にオープンした「スシローToGo」。今、拡大中のテイクアウトの店だ。駅の利用客が気軽に立ち寄れ、安さも店と変わらない。大人気の「海鮮ちらし」はネタがびっしりで580円だ。

さらに新宿には「スシロー」新宿三丁目店が。今、出店攻勢をかけるのは都市型の店舗だ。そんな積極攻勢で、「スシロー」はコロナ禍の営業制限にも負けず、過去最高の業績を記録した。

安い・うまい・早い~回転寿司スシロー新戦略


今や回転寿司業界はなんでもあり。「和風だしカルボナーラ」「ビーフ100%ハンバーグ」など、各社ともメニューのバラエティー化を競い合ってきた。

だが今、「スシロー」が一番重視するのは、マグロやハマチ、サーモンなど110円の定番ネタの味だという。

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例えばマグロの赤身は、キハダマグロを廃止し、味が濃厚な40キロ以上のメバチマグロだけに限定した。

「濃厚でマグロの味が強いんです。それがおいしい。価格的には高くなりますが、大きくて安定したほうがをお客さまに届けたい」(商品部・山上雅則)

通常は尻尾だけ行う身質のチェックも中心部まで確認。合格したものだけを仕入れる厳しいチェック体制をしいた。定番を徹底的に強化し、客を掴む戦略だ。

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また、「スシロー」では、パネルで注文すると、驚くほどの早さで寿司が流れてくるという。その秘密は、スシローが独自に開発した引き込みレーンにある。注文した寿司が流れる専用レーンから、それぞれのテーブルに枝分かれして寿司が届く仕組み。これにより、専用レーンが混み合うことなく、次々に寿司を流すことが可能になった。

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厨房から流された皿が急に進路変更することも。テーブルに最短ルートで届けられるよう、複雑にショートカットしていくようにもなっている。


大阪のとある場所に「スシロー」が執念を燃やす現場がある。店舗を再現したこのスペースで独自のレーン開発を行っている。最近手がけているのが、皿の枚数を店員が数えなくてすむ自動会計用のカメラだ。

スタッフはコロナ禍にも負けず、店舗を磨き上げるべく奮闘してきた。その裏には、トップからのこんな言葉があった。

「コロナ禍だからこそ『今はピンチだが、チャンスに変えろ』と。『コロナはいつか収まる。今止めたらダメだ』と常々言われています」(情報システム部・杉原正人)

「スシロー」を率いるFOOD&LIFE COMPANIES社長・水留浩一は、外資系コンサルの経験から、その後はJALの再建を手掛けた異色の経歴の持ち主。2015年に「スシロー」のトップに就任、回転寿司の絶対王者に導いてきた。並み居る強豪を引き離し、このコロナ禍でも最高業績を叩き出した凄腕の経営者だ。

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水留が推し進めるのは「よりうまい寿司をより安く」。魚のさばきたてにこだわるその横では、超高速でシャリ玉が作られ、細巻も自動で海苔が巻かれていた。皿を全自動で洗浄し、色ごとに分けてくれるマシンもある。寿司飯作りも自動化。効率化できるところは徹底的に行っている。限界を超えるうまさと安さに挑んでいるのだ。

その「スシロー」が今までにない取り組みに挑んでいた。それが大トロから赤身までおいしそうな「生本まぐろ」(6貫1078円)。水産資源を守るための新たな商品だという。

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「どんどん魚が減ってるなかで、養殖ではあるものの、天然に近いことがポイントになります」(コミュニケーション企画推進部・平野叶恵)

奄美大島の、マグロが産卵に来る海域に設置した巨大なイケスで、自然に近い環境で育てた本マグロ。養殖で水産資源を守りつつおいしさにも手を抜かない。

回転寿司をずっと楽しんでもらうための挑戦に終わりはない。

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50周年でも最高業績~好調を支える若いファン


国民食といえば、その圧倒的強さを見せつけている存在が「カップヌードル」。その「カップヌードル」が2021年9月、発売50周年を迎えた。

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開発したのは、朝ドラのモデルにもなった日清食品創業者・安藤百福。1958年、百福はまず、世界初の即席麺「チキンラーメン」を発売。お湯を注ぐだけで食べられる画期的な商品を世に送り出す。

1966年、その「チキンラーメン」をアメリカに売り込みに行った時、百福は運命の光景にであう。アメリカ人は、試食に紙コップを使い、フォークでカッコよく食べたのだ。丼と箸が当たり前だった時代、百福はひらめく。片手で持てるカップに麺を入れてフォークで食べる、今までにないラーメンを作ろう、と。

カップを麺の容器としてだけでなく、お湯を入れて調理器具にもして、さらにそのまま食器としても使う独創的なアイデア。半世紀後、世界100カ国で親しまれ、累計販売500億食を突破するお化け商品となった。

そんな「カップヌードル」の絶好調を支えるのは若い新たなファンたちだ。彼らがはまっている理由のひとつに、「カップヌードル」の公式SNSの投稿がある。容器を使った工作シリーズや、「カップヌードル」で作る料理の紹介などの楽しい内容で、公式ツイッターのフォロワーはこの5年で13倍、42万人にまで増えた。

SNS向けのCM撮影現場を覗くと、そこには大規模なミニチュアが。そこで可愛らしい怪獣が攻撃を目論むのは、なぜか日清食品の本社ビル。外では本社を襲う怪獣をやっつける色鮮やかなヒーローたち。だが、その中にはなぜかアフロヘア、サングラスの男が混じる。シュールすぎる「カップヌードル」の世界観、指揮するのは安藤百福の孫だった。

2021年7月、東京本社で開かれたのはSNS向けCMの企画会議。50周年の記念商品「スーパー合体シリーズ」のCMだ。商品は「カップヌードル」の8種類の定番の味から2つずつを組み合わせたもの。例えば、「チーズカレー」と「チリトマト」が合体すると「チーチリカーマト」といった具合だ。

7年前から日清の屋台骨「カップヌードル」の全てを任されている日清食品社長・安藤徳隆に対して、宣伝部の岡崎俊英が「スーパー合体シリーズ」のプレゼンを始めた。

内容は、日清を救うため、カップヌードルのヒーローたちが合体して怪獣を撃退するという凝ったストーリー。練りに練ったプレゼンが終わると、安藤が口を開いた。

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「予想の範囲内というか、シュールさが足りない」

そして、「チーズカレーはアフロとサングラスにするとか......」。実はCM現場のシュールなキャラクターは安藤の発案だった。さらに細かい指摘は続く。さまざまなディテールが修正されて、ちょっとクセになるけど親しみもわく、独特の世界観に仕上がった。

流行に敏感な三代目~カップヌードル新戦略


安藤はその卓越した感覚で話題となるCMを次々と世に出してきた。魔女の宅急便を青春アニメ風に描いたものから、クセになるメロディーの八村塁、ブラジルでサムライが華麗なサッカーを披露するCMも。手がけた作品は国内外でさまざまな賞を受賞した。

そんな安藤の戦略で「カップヌードル」の売り上げは5年連続で過去最高を更新。日清食品の売り上げも伸び続けている。

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とにかく流行り物に敏感な安藤。CMでおなじみの二人組も安藤がネットの動画で見つけた海外のパフォーマーだ。そんな流行り物への感性は安藤百福も並外れていたという。

安藤は大学院修了後の3年間、90歳を超えていた百福の鞄持ちをしていた。その百福について、安藤はスタジオで次のように語っている。

「産業を生み出すのはすごいことだと思います。多くの仲間たちと産業を育てていこうと、普通、特許は独り占めするものですが、インスタントラーメンの特許を開放して、できるだけたくさんのメーカーで一緒に盛り上げようとしたからこそ、1つの産業としてスピード感を持って成長した。そういう発想はすごかったのではないかと思います」

日清食品HD宣伝部長・米山慎一郎に、SNSで発信した楽しいカップヌードルグッズを見せてもらった。手の込んだ工作は社員たちの手作りだという。「カップヌードル」にお湯を「入れている風」(米山)の紙袋、などというものも。なんとか楽しんでもらいたい、そんな思いにあふれていた。

今やそのアイデア出しは新人宣伝部員の登竜門的になっているそうだが、「SNSのネタを考えるのはすごくしんどいです」(米山)

最強の国民食に休む間はないのだ。

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※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~
大昔、戦争中、国民服というのがあった。おもにカーキ色でひどい生地だった。今は、誰もが、自由に着る服を選んでいる。だが、着る服は自由でも、食べるものには規制がある。「おいしいもの」しか食べないのだ。カップヌードルは便利で、かつ、おいしかった。だから支持された。回転寿司も革命的だった。寿司を、高級で特別なものから、国民の近くに引き寄せた。スシローも、日清食品も、共通点は考え抜かれていることだ。考え抜いて「国民食」の座を維持している。

<出演者略歴>
水留浩一(みずとめ・こういち)1968年、神奈川県生まれ。1991年、東京大学理学部卒業後、電通入社。2009年、企業再生支援機構常務取締役就任。2010年、日本航空取締役副社長就任。2015年、あきんどスシロー代表取締役社長就任。
安藤徳隆(あんどう・のりたか)1977年、大阪府生まれ。2002年、慶應義塾大学大学院修了、祖父・百福の鞄持ちを3年間務める。2007年、日清食品入社。2015年、日清食品社長就任。2016年、日清食品ホールディングス副社長就任。

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