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Thursday, July 22, 2021

中国の食品輸入 安全強化 障壁にするな - 日本農業新聞

 中国は輸入食品の安全管理を来年から強化する。外国からの新型コロナウイルスの侵入防止を理由として挙げているが、輸入規制の強化につながるとの懸念が指摘されている。日本の農林水産物輸出に影響しないよう、同国は目的通りに適正に運用すべきだ。

 安全管理の強化のために中国は、同国への輸出食品を製造する外国企業に対する登録管理規則を見直し、2022年1月から全ての企業に税関当局への登録を求める。これまでは、肉類や水産品など一部を除き、届け出制だった。

 安全管理の強化は、冷凍食品の輸入コンテナの内壁や包装資材から新型コロナウイルスの陽性反応が多数発見されたことなどが理由だ。同規則の見直しは世界貿易機関(WTO)への通告を済ませた。

 登録では、輸出国の食品安全管理体制の審査や輸出企業の現場検査の結果、販売記録などを総合的に評価し、合格した企業だけに中国への輸出を認める。有効期間は5年。登録方法には輸出国政府が企業を推薦する推薦登録と、企業が申請する申請登録がある。推薦登録は肉および肉製品、乳製品、食用穀類、生鮮および乾燥野菜ならびに乾燥豆類など18の食品が対象だ。

 国民に安全な食品を供給するために法制度を整備するのは理解できる。しかし、中国の輸入規制には、国際社会から厳しい目が注がれていることも認識すべきだ。新型コロナの発生源を巡って中国への国際調査を求めたオーストラリアに対し、中国が大麦への反ダンピング制裁関税で対抗した経過があるからだ。

 香港や人権問題で中国批判を強める米国やオーストラリアなどへのけん制や「交渉カード」に使うのではないかとの警戒感も出ている。政治的利用が狙いとの誤解を受けないようにすべきだ。

 中国の農産物輸入は1500億ドル(2019年)を超え、世界最大の純輸入国だ。輸入超過は700億ドルを上回る。数量ベースでは油糧種子や穀物、畜産品などが多い。主要輸出国である米国やオーストラリアへの輸入規制につながれば、WTOが紛争処理機能を失っているだけに深刻な貿易紛争に発展する可能性がある。WTOは最高裁判事に当たる上級委員会委員を米国の反対で選考できず、審理を行えない事態が続いている。

 日本も無関心ではいられない。政府は農林水産物・食品の輸出を30年までに5兆円に拡大する目標を立てている。実現には、拡大を続ける中国市場の取り込みは欠かせない。

 農水省は登録手続きを急ぎ、10月末までには完了したい考えだ。しかし不明な点も多く、輸出企業からは戸惑いの声も上がる。農林水産物輸出が混乱しないよう、政府は対応に力を入れるべきだ。
 

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