【ソウル山口卓】世界的な人気を誇る韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」の兵役問題が再び注目されている。兵役を事実上免除する対象に大衆文化芸術分野で優れた実績がある人を含める兵役法改正案は昨年11月、国会審議で結論が出なかったが、5月に発足する尹錫悦(ユンソンニョル)次期政権チームが免除の特例を改めて検討する動きを見せているためだ。ただ兵役の公平性は韓国国民にとって極めて敏感なテーマ。影響力を増すK-POPの国への貢献度をどう評価するか論争になっている。
次期政権の「引き継ぎ委員会」は4日、BTS所属事務所を含む複数の芸能事務所代表と懇談し、K-POPの支援策について話し合った。2日にも安哲秀(アンチョルス)委員長らがBTS所属事務所を訪問。安氏は以前、実質的な兵役免除である「代替服務」について「BTSは十分に資格がある」と語っており、免除に向けた議論が進むとの予測が広がる。
兵役法では、国際的なスポーツ大会や芸術コンクールの上位入賞者を対象に、1カ月程度の基礎訓練を受ければ特技を生かしたボランティアなどで代替できると規定する。だがBTSを含むK-POPなどの大衆文化芸術はこの代替服務の対象外となっている。
ただBTSがもたらす経済効果は2014~23年で56兆ウォン(5兆8千億円)に達するとの試算があり、昨年9月には文在寅(ムンジェイン)大統領特使として国連でも演説するなど影響力は大きい。社団法人韓国音楽コンテンツ協会は「政府は(大衆文化が)芸術スポーツ分野ほど国益に寄与していないと考えているのか。これが公平と考えるのか問い直したい」との意見を表明している。
昨年11月の国会国防委員会での改正案審議では、賛成派が「BTSが生み出す経済効果を考慮すれば兵役特例の機会を与えるのが適当だ」と主張したのに対し、反対派はBTSの功績は認めるものの、兵役免除には「公平さに敏感な若い世代の虚脱感を生む」と慎重で、結論が出なかった。背景には兵役の不公平を許さない強い国民感情がある。
1990年代に人気だった歌手ユ・スンジュンさんは02年の招集直前に韓国籍を放棄して米市民権を取得。兵役を免除されたことが韓国国民に「兵役逃れ」と非難され、20年たった今も帰国できていない。
昨年5月には女性も兵役に就くべきだと訴える大統領府への請願に29万人以上が賛同した。就職や昇進などで女性に比べて不利だと感じる男性の不満の表れという見方が強い。
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韓国の世論調査会社4社が20年10月に発表した調査結果によると、BTSを兵役特例対象に「含めるべきだ」との回答は46%、反対が48%と二分している。ソウル市の会社員男性(38)は「BTSの貢献度を考えれば兵役免除は納得できる。ただ、人気がある芸能人なら免除ということになりかねないので、客観的な基準が必要だ」と話す。
5月10日の尹氏の大統領就任式でBTSの公演を検討しているとの報道が出ると、引き継ぎ委のホームページに「政治利用」と抗議する書き込みが殺到。兵役免除も同様に捉えられる可能性があり、政権に打撃を与えかねない。尹氏はメディアのインタビューに兵役免除拡大について「客観的な基準の検討と国民的合意を導く努力が必要だ」と答えるにとどめている。
今年12月に入隊期限が迫るBTS最年長メンバー、JINさん(29)自身は20年11月の記者会見で「国から呼ばれればいつでも応じる。メンバーともよく話をしているが、兵役にはみな応じる予定だ」と話している。
からの記事と詳細 ( 「再燃」世論を二分、BTSは免除すべきか 韓国新政権誕生で兵役問題… - 西日本新聞 )
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