データ保管に欠かせないインフラであるストレージ。画像や映像、メール、各種文書といった非構造化データの利用は一段と広がっており、それがストレージのデータ保管量の増加を助長する。
継続的なデータ保管量の増加は、世界の消費電力量に大きく影響する可能性がある。ストレージベンダーのNetAppでチーフテクノロジーエバンジェリストを務めるマット・ワッツ氏は、「ITが世界の消費電力量抑制に対して担う責任は重大だ」と指摘する。ワッツ氏がそう話す背景にあるのは、データセンターの消費電力量が飛躍的に増大するとの予測だ。
2020年における世界のデータセンターの消費電力量は、国際エネルギー機関(IEA)の試算によれば200〜250テラワット時だった。これは2020年時点で世界の消費電力量の1%程度。そこから10年後の2030年時点を予測すると、状況は一変する。
変化するSSDとHDDの比較ポイント 消費電力をどう捉えるべきか
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国立研究開発法人である科学技術振興機構(JST)の公開資料「Impact of Progress of Information Society on Energy Consumption (Vol. 2)」は、2030年における世界のデータセンターの消費電力量が3000テラワット時になると見込んでいる。こうしてデータセンターの消費電力量が大幅に増大するという予測を踏まえて、NetAppは2030年にデータセンターの消費電力量が全体の12〜15%を占める可能性があると独自に試算した。
一般的に、ストレージはデータセンターの全消費電力量(空調や照明などIT機器以外の消費電力量も含む)の10〜15%程度を占める。データ保管の消費電力量を抑制する上で考慮すべき点の一つになるのが各種ストレージの消費電力だ。企業向けストレージとして主流になっているSSDとHDD、大容量データの長期保管に使用される傾向のあるLTO(リニアテープオープン)規格のテープは、それぞれ消費電力において特性が異なる。
ワッツ氏は「企業がこれから各種のストレージにどのようなバランスで投資をするのかは興味深い点だ」と話す。通常はデータの用途に応じて、容量単価、データ読み書き速度、スループット(データ転送速度)、コストといった観点でストレージを選定することになるが、今後は消費電力も要件の一つとしてより重要になる可能性があるからだ。
企業がサステナビリティ(持続可能性)の向上に取り組む際、CO2(二酸化炭素)排出の要因となり得る消費電力量の抑制は、議論すべき重要なテーマになる。その観点を踏まえてストレージを選定する場合は、「単純にコストで比較することはできない」とワッツ氏は指摘する。
例えばSSDとHDDを比較した場合、容量単価は一般的にSSDよりHDDの方が安価だ。その半面、内部にプラッタ(円盤状の記録媒体)や磁気ヘッドなどの可動部品を搭載するHDDより、可動部品を持たないSSDの方が消費電力は小さくなる傾向にある。コスト抑制を重視する企業であっても、消費電力量の抑制を同時に重視する場合は、コストが安価だという理由でストレージを選定することが正しいとは一概に言えなくなる。つまり消費電力の観点が入ることで、選定するストレージが変わる可能性が出てくるということだ。
後編はSSD、HDD、テープの特性を踏まえて、消費電力を考慮に入れた場合のストレージの検討ポイントを紹介する。
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