[30日 ロイター] -
<為替> ドルが下落。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が「早ければ12月にも」利上げペースを減速する可能性を示唆したことに反応した。
パウエル議長は30日、ワシントンのシンクタンク、ブルッキングス研究所で講演し、「インフレ引き下げに十分な金利水準に近づくにつれ、利上げペースを緩やかにすることは理にかなっている。その時期は、早ければ12月米連邦公開市場委員会(FOMC)で訪れるかも知れない」と語った。同時に、インフレとの戦いはまだ終わっていないと注意を促した。
金融市場では、フェデラルファンド(FF)金利が来年5月に4.95%でピークに達するという見方が織り込まれた。朝方は6月に約5.06%に達するという予想が織り込まれていた。
終盤の取引で、主要通貨に対するドル指数は0.99%安の105.78。月間では5.10%安と、2010年9月以来の大幅な下げを記録する見通し。
ドル/円は0.72%安の137.70円。月間の下げ率は7.39%と、1998年12月以来の大幅安となる見通し。
ユーロ/ドルは0.95%高の1.0424ドル。ユーロの月間上昇率は5.52%と、10年9月以来の高さとなる勢い。
また、FRBは午後に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、10月中旬から11月下旬までに米経済活動がほぼ横ばいから小幅な拡大にとどまり、根強いインフレや労働力不足を巡りさまざまなシグナルが示されたという認識を示した。
欧州連合(EU)統計局が発表したユーロ圏の11月の消費者物価指数(HICP)速報値は前年比上昇率が10.0%上昇と、10月の10.6%から鈍化し市場予想(10.4%)を下回った。インフレがピークを過ぎたとの期待が強まり、欧州中央銀行(ECB)による利上げペース減速の可能性が高まる可能性がある。
中国の新型コロナウイルス規制緩和への期待から、豪ドルは1.67%高の0.6799米ドル。一時9月13日以来の高値となる0.6801ドルを付ける場面もあった。月間では6.23%上昇し、16年3月以来の伸びを記録する見通し。
NY外為市場:[USD/J]
<債券> パウエルFRB議長の講演が予想よりもハト派的となったことで、利回りは一時の上昇から下げに転じた。
フェデラルファンド(FF)金利先物が織り込む12月FOMCでの0.5%ポイントの利上げ確率は89%と、パウエル議長講演前の83%から上昇した。2月FOMCでの0.5%ポイント利上げ確率は58%となった。
また、FF金利が来年5月に4.95%でピークに達するという見方も織り込まれた。講演前は6月に5.05%に達するという予想が織り込まれていた。
アプタス・キャピタル・アドバイザーズの債券ポートフォリオマネジャー、ジョン・ルーク・タイナー氏は「市場は最悪の事態をすでに織り込んでいるようで、イベントに絡むボラティリティーが過ぎ去ったことはリスク資産への追い風となっているようだ」と指摘。同時に、ターミナルレート予想が低下していることを踏まえ、「これはおそらくパウエル議長が求めている反応ではないだろう」と述べた。
終盤の取引で、10年債利回りは6.1ベーシスポイント(bp)低下の3.647%。月初からは11.5bp低下した。月間ベースでの低下幅は7月以来最大。
2年債利回りは約10bp低下の4.372%。月初かは17bp上昇した。月間ベースでの上昇幅は2021年9月以来最小だった。
2・10年債の利回り格差はマイナス72.7bpと、マイナス幅は縮小したものの、長短利回りが大きく逆転した状態が続いている。
30年債利回りは3.795%に低下した。
5年債利回りは10bp低下の3.821%。月間ベースでは21.6bp低下し、20年4月以来の大幅低下となった。
朝方発表された一連の米指標を受け、利回りは一時上昇していた。
第3・四半期の米実質国内総生産(GDP)改定値は年率換算で前期より2.9%増と、10月に発表された速報値の2.6%増から上方改定された。
企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した全米雇用報告によると、民間部門雇用者数は11月に12万7000人増加と、市場予想を大きく下回った。
米金融・債券市場:[US/BJ]
<株式> 大幅に上昇して取引を終えた。パウエルFRB議長が早ければ12月にも利上げペースを縮小する可能性があると述べたことを好感した。
議長講演を受けてS&P総合500種は序盤の安値から切り返し、ナスダック総合は大きく上昇した。
FRBの利上げ減速観測やインフレ鈍化の兆しを示す最近の統計を受け、S&P500は11月に5.4%上昇。月間で2カ月連続のプラスとなった。ダウ工業株30種も月間で5.7%、ナスダックは4.4%、それぞれ上昇した。それでも年初来ではS&Pが約14%安、ナスダックは約27%安となっている。
この日の取引では大型ハイテク株のアップルが4.9%高、マイクロソフトが6.2%高、エヌビディアは8%超上昇した。
テスラも7.7%高。中国の大手証券会社、招銀国際金融(CMBI)が公表した11月1─27日の国内乗用車小売販売データによると、テスラの販売は「モデル3」と「モデルY」の販売奨励金と値下げが寄与して前年比で2倍近く増加した。
フィラデルフィア半導体指数は5.85%上昇し、年初来の下落率が約28%に縮小した。
製薬大手のバイオジェンは4.7%高。エーザイと共同開発するアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」の臨床試験で、認知機能の低下を遅らせる効果が示された。
企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)が発表した全米雇用報告によると、11月の民間部門雇用者数は12万7000人増と市場予想を大きく下回り、金利が高水準となる中、労働需要が冷え込んでいることを示唆した。
グローバルトのキース・ブキャナン氏は「ADP雇用者数が予想を下回ったことは、FRBが利上げ減速に着手するというシナリオに合致し、金利に敏感な資産に間違いなくプラスとなる」と述べた。
米国株式市場:[.NJP]
<金先物> FRBによる積極的な利上げ継続への警戒感が重しとなり、 反落した。中心限月2月物の清算値(終値に相当)は前日比3.80ドル(0.22%)安の1オンス=1759.90ドル。
NY貴金属:[GOL/XJ]
<米原油先物> 需給引き締まり観測を背景に買われ、3日続伸した。米国産標準油種WTIの中心限月1月物は前日清算値(終値に相当)比2.35ドル(3.01%)高の1バレル=80.55ドルだった。2月物は2.38ドル高の80.66ドル。
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は29日、ロイターに対し、ロシ アの原油生産は2023年第1・四半期末までに、日量約200万バレル減少するとの見通しを示した。
中国国家衛生健康委員会はこの日、中国本土で新型コロナウイルス新規感染者が29日に3万7612人確認され、2日連続で減少したと発表。エネルギー消費大国である中国の需要減退を巡る懸念が幾分和らいだ。これらの強材料を背景に原油が買い進まれ、朝方には一時81ドル台まで上昇した。
米エネルギー情報局(EIA)がこの日午前に発表した25日までの週の米原油在庫は4億1910万バレルと、前週から1260万バレル減少。取り崩し幅がロイターの市場予想(280万バレル減)を大きく上回った。前日夕に米石油協会(API)が発表した米国内原油在庫も取り崩しとなり、需給の引き締まり観測が強まったことも買い要因。ただ、冬がこれから本格化する中、ヒーティングオイルの需要が減退し、EIA週報ではヒーティングオイルを含むディスティレート(留出油)在庫は350万バレル増と予想を上回る積み増しとなったことから、上値は限定的だった。
NYMEXエネルギー:[CR/USJ]
ドル/円 NY終値 138.03/138.06
始値 138.71
高値 139.89
安値 137.66
ユーロ/ドル NY終値 1.0405/1.0409
始値 1.0358
高値 1.0428
安値 1.0291
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 104*18.00 3.7452%
前営業日終値 103*16.50 3.8020%
10年債(指標銘柄) 17時05分 104*08.50 3.6109%
前営業日終値 103*03.50 3.7480%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*17.75 3.7522%
前営業日終値 99*25.25 3.9220%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*10.38 4.3287%
前営業日終値 100*01.63 4.4730%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 34589.77 +737.24 +2.18
前営業日終値 33852.53
ナスダック総合 11468.00 +484.22 +4.41
前営業日終値 10983.78
S&P総合500種 4080.11 +122.48 +3.09
前営業日終値 3957.63
COMEX金 2月限 1759.9 ‐3.8
前営業日終値 1763.7
COMEX銀 3月限 2178.1 +34.5
前営業日終値 2143.6
北海ブレント 1月限 85.43 +2.40
前営業日終値 83.03
米WTI先物 1月限 80.55 +2.35
前営業日終値 78.20
CRB商品指数 279.7564 +4.2379
前営業日終値 275.5185
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