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インフレのなか、D2Cブランドは自社のサブスクリプションプランを顧客の資金の節約策として売り込んでいる。
この1年、無数のブランドが値上げを行ってきたため、インフレによって多くの企業が値上げを余儀なくされる前に、今すぐサブスクリプションプランに申し込むことで、料金を「固定」できると買い物客に勧めているブランドもある。
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企業は長年にわたり、サブスクリプションサービスを、時間や資金を節約する、あるいはCovidにより引き起こされるサプライチェーン不足のなかで確実に商品を供給し続けるための方法として位置づけ、顧客のさまざまな悩みを解決するための手段として販売してきた。しかし、インフレの影響で財布の紐が固くなっている買い物客もいるなか、サブスクリプション&割引(Subscribe and Save)プランに焦点を当てることは、一部のD2Cブランドにとって成功する戦術であることが証明されている。
価格に敏感な顧客に向けた戦術
生ドッグフードブランドのマーブ(Maev)の創業者でCEOを務めるケイティ・シュピーズ氏は、「サブスクリプションにより、不安定な期間でも安定感を得られる」と、米モダンリテールに語った。これは、売上の予測やマーケティングのコスト削減に役立つため、消費者だけでなく企業側にも当てはまることだ。
「今後1年間の計画をするなか、当社はすでに、消費者がより厳しい予算に直面していることや、インフレが当社のカテゴリーや当社自身のサプライチェーンに影響を与えることが、わかりはじめている」と、同氏は述べている。
このような背景から、マーブは最近、価格に敏感な顧客に向けたいくつかの戦術を展開しました。
最初の方針は、マーブの固定式の価格システムについて、より明確に言及することだと、シュピーズ氏は語る。「一度契約すれば、価格は一生据え置きだ」と、同氏は述べる。同社のサブスクリプション価格は4週間分の食料について169ドル(約2万4300円)で、1食あたり2.82ドル(約406円)だ。シュピーズ氏は、同社は将来的にも値上げする計画はないと語る。ただし、マーブが既存のサブスクライバーの価格を上げないという提案は、ほかの多くのカテゴリーで値上げが行われている現在、顧客にとって魅力的なものだと同氏は信じている。
シュピーズ氏は、このサブスクリプションの約束が、マーブの「価格の透明性」というミッションの一部であり、ソーシャルメディアやメールマガジンなど、同ブランドの多くのマーケティングキャンペーンで焦点となっていると語る。
サブスクリプションのもうひとつの特典は、昨年から始まったマーブのキャッシュバックプログラムだ。これは、会員になると、購入ごとに15〜25%の割引に等しいキャッシュバックを受けられるというものだ。会員は、次回以降の注文時に使用できるキャッシュクレジットを長期的に獲得することができ、マーブを長期間利用するほど会員のランクが上がると、シュピーズ氏は語る。
サブスクリプションの料金を固定するという約束は、ペットブランドのあいだでは一般的なものだ。バーク(Bark)のCEOを務めるマット・ミーカー氏は8月、顧客はサブスクリプションがアクティブである限り、将来のボックスについて、現在の価格で購入できることが保証されると、米モダンリテールに語った。
サブスクリプションは「長期的な節約」
コーヒーブランドのビーンボックス(Bean Box)は、7月4日の独立記念日と9月のレイバーデーに、コーヒー豆の割引を受けられるキャンペーンを実施し、コーヒーバッグのサブスクリプション購入を促した。同社によると、キャンペーンの大部分は、継続サブスクリプション価格を説明し、自家製コーヒーの費用を節約できることに焦点を当てた。たとえば、コーヒーショップでコーヒーを注文すると、5ドル(約720円)以上かかるが、コーヒーバッグ1つで24杯以上のコーヒーを淹れることができ、1杯ごとの価格はt約0.55ドル(約79円)だという事実を強調した。
ここでの特典は、期間限定の申し込みで、顧客はレイバーデーの連休に最初のバッグを9.05ドル(約1300円)で受け取ることができた。独立記念日の連休にも同様のプロモーションを行い、加入した顧客は、最初のバッグを7.04ドル(約1010円)で受け取ることができた。
このプロモーションは、新規顧客が長期的な節約をするためにサブスクリプションを選んでもらうことを意図したものだ。通常、ビーンボックスのサブスクリプション価格は、最低20ドル(約2880円)で、顧客は毎週、隔週、または毎月1袋のコーヒー豆のバッグを受け取ることができる。ビーンボックスの共同創設者であるライアン・フリッキー氏は、ビーンボックスはレイバーデーのプロモーションによって、サブスクリプションが前週比で50%増加したと、Eメールに記した。
Cavuベンチャーパートナー(Cavu Venture Partners)の成長担当プリンシパルを務めるジェナ・ジャクソン氏は、それがサブスクリプション&割引プログラムであれ、Amazonサブスクリプションであれ、eコマースブランドは、既存の顧客のライフサイクルを伸ばし、来年へとつなげようとしていると語っている。
多くの顧客は、状況が厳しいときに不必要なサブスクリプションをキャンセルする傾向があるが、一部の顧客はサブスクリプションを継続することに価値を見いだすと、ジャクソン氏は語る。「現在、サブスクリプションを活用するブランドが増えている」と同氏は説明する。「ペットや食品など、利便性が必要とされる特定のカテゴリーでは理にかなっている」と同氏は付け加えている。
高級ブランドも参入
オンライン卸売小売業者であるボックスト(Boxed)が最近行った広告キャンペーンでは、長期的な節約をアピールすることがテーマだった。多くの食料品ブランドが値上げをするなか、同社はAmazonへのさり気なくけん制し、セット販売の利点に焦点を当てた。
コーヒーやペットフードなどの日用品は、サブスクリプションへの準備ができている。一方、ハイエンドブランドであっても、特に景気後退の警告が迫るなか、サブスクライバーの基盤を中心にビジネスを構築しているブランドがある。
硬水から髪や肌を保護するためのシャワーヘッドフィルターを販売している美容ブランドのジョリー(Jolie)は、2021年12月の事業開始以来、補充用のサブスクリプションプログラムを運用してきた。同社は過去1年間にわたり、顧客が継続サブスクリプションプランを選択し、3カ月ごとの補充料金を節約するよう呼びかけてきた。同社の料金は単独の注文で165ドル(約2万3800円)、サブスクリプションで148ドル(約2万1300円)だ。
「現在のところ、ジョリーの顧客の80%は、サブスクリプションを選択している。これは、フィルターが正常に機能するには90日ごとに交換が必要だという簡単な理由からだ」と、創設者でCEOを務めるライアン・バベンチェン氏は述べる。この提案に特化することは、ここ数カ月の同社のマーケティング戦略の主要な部分となった。
現在のところ、ジョリーのマーケティングの多くはユーザー生成コンテンツを通じて行われており、顧客は開梱の体験や、取り付け、そしてフィルターが肌や髪に与えた影響などをソーシャルメディアで共有している。「このような顧客によるデジタルの口コミこそが、マーケティングの最良の形だと確信している」と、同氏は述べている。同氏は、ユーザー生成コンテンツだけがサブスクライバー層の多さの要因ではないとしているが、商品の長期的な効き目を示すことで、同社の買い物客のライフサイクルが伸びていると語る。
需要計画に役立つ
新規顧客の獲得がにますます多くの費用を要する状況で、これらのD2Cブランドは、割引サブスクリプションをプロモートすることが、不確定な環境での需要計画にも役立つということがわかりはじめている。
マーブのシュピーズ氏は次のように述べている。「顧客がサブスクライバーであるということは、リピーターになる意思を企業に伝えていることになる。それに対して企業は、最初に低い価格を提示できる。1回限りの注文よりも、長い時間をかけてマーケティングのコストを回収できるからだ」。
[原文:DTC brands are marketing subscriptions to price-conscious customers amid inflation]
GABRIELA BARKHO(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via Maev
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